2025年5月17日土曜日

修復を終えて


ピアノが無事完成し、ご家族のお家へ帰ることができました。
長い長い修復の道のりが終了し、ピアノは甦り、新たな出発となりました。

この修復の仕事は、「修復」というより「救済」と言えると思うほど、初めは本当にひどい状態でした。
通常、この状態のピアノを修復しようとは、おそらく誰も思いません。
でも、ご家族の思い出のピアノ、大変な人生を苦労して生きてこられたご先祖様のピアノ、
そのピアノを捨てることはできない、どうしても一緒にいたい!というご家族の熱い想いを受けて、できる限りで良いならやりますとのことで、引き受けました。

実際、修復はとても大変でした。
想定外の問題も起こり、仕事がどんどん増え、予定通りには進みませんでした。
隅々まで完璧な仕事ができたとは言えませんが、できる限りのことはしました。
限界はありましたが、予想以上に元の作りが良く、材料も良く、かなり傷みが激しく状態が悪い割には、ピアノは修復に耐えられる体力を持っていました。

そして、最終的な音色を聴いた時は、美しさに感動しました。
本当に素晴らしい、美しい音色で歌うピアノが甦りました。

それほどひどい状態だったのに、ピアノは死んでいなかったのです。
私にとっても、驚きの発見でした。
天国にいらっしゃるご先祖様のお力添えも、もしかしてあったかもしれませんね。
ピアノは見事に甦り、またご家族と共に歌える日が来ました。

このピアノは、唯一無二のピアノです。
ピアノの生きてきた歴史、その中に詰まった沢山の人の想いが、今のピアノの姿と音色となっています。
そしてこれからも、ピアノを受け継いでいく人の想いが重ねられます。

1年半前にピアノが工房に来た時の、どんよりと暗く重いピアノの顔を思い出すと、今は見違えるように明るく、歌いたい気持ちいっぱいの若々しい顔になり、ご子孫のお家へ帰られたことが嬉しく幸せ!というように見えます。

私もこの仕事を通じて多くのことを学び、多くの幸せをいただきました。
ありがとうございました。

ピアノとご家族様とご先祖様、皆様が一緒になって楽しい歌をいっぱい歌って、幸せがいっぱい来ますように、お祈りしています。

2025年5月6日火曜日

修復後の音

 修復後の音1. バッハ

修復後の音2. ベートーヴェン(1)

修復後の音3. ショパン

修復後の音4. ヘンデル

修復後の音5. ベートーヴェン(2)

修復前の音

2025年5月4日日曜日

椅子2

 





全体をきれいに掃除し、蝶番を磨いてしっかり取り付け直しました。
椅子の完成です。
2人がけで連弾もできるようになっていて、中には楽譜を収納できる椅子です。

椅子1

 








ピアノとお揃いの椅子は、脚の土台が1つ失われていて、他の土台もガクガクでした。
1つは同じようなものを作って色を塗り、3つはしっかり付け直して、フェルトも貼りました。

整音

 




音色の最終調整をしています。